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定時きっかりに仕事が終わったのは俺と手嶋だけだった。
「とりあえず、時間も余るしお茶でもしてくか」
「でしたら、スタパ行きません? 新作飲みたいんですよー!」
「ああ、構わないけど」
手嶋と俺は居酒屋の予約時間までカフェで過ごす事にした。
「真島主任、飲み物以外に何か頼まれます?」
「俺はいい。手嶋も飲み物だけにしとけ。居酒屋でたくさん食うんだから」
「はーい」
「新商品やたら甘そうだな」
「俺、甘いの大好きなんでー!」
「お子様舌だもんな」
「お子様舌じゃないもんっ」
「拗ねるな、拗ねるな」
手嶋が本性の甘ったれヤローになってからは俺も遠慮が無くなってきた。手嶋くんなんて呼んでた頃が遠い昔に感じる。
「真島主任はブラックですか?」
「ああ、俺はいつもコーヒー」
「ひゅーっ! おっとなー!」
「バカにしてるのか?」
けど、明日からゴールデンウィークで暫くこのアホとも会わないのか。
「明日からゴールデンウィークですね。真島主任と離れるの寂しいです」
「俺はせいせいするけどな」
「えっ!」
「毎日ワガママ言われ放題が無くなる」
「とか言って、いざ手嶋が離れたら寂しくなるんですよ! そうに決まってます!」
「なんだ、その自信は。とりあえず、社会人初めてのゴールデンウィークなんだから羽目外しすぎるなよ? 怪我、事故は起こさないよう」
「夏休み前の先生みたいですね!」
まぁ、数日間とは言えちょっとは寂しいかもな。
手嶋とは仲良くなってきたし、仲良くなりすぎてなめられてるようにも思うが。
「手嶋も実家帰るのか?」
「はい! 真島主任も横浜に帰るんですか?」
「ああ。犬の顔も見たいしな」
「あの壁紙のわんちゃんですね! 俺も会いたいし、真島主任について行こうかな」
「だめだ。お父さんお母さんに元気な顔見せてやれ」
「はーい」
こいつが甘ったれなのは母親と姉が原因って言ってたな。ゴールデンウィーク明け、さらに甘ったれになってたらやばいな。
「けど、無事に一カ月乗り切れて良かったです」
「へ?」
「就活の時も、入社したての時も不安でずっと胃が痛くて。真島主任が俺に優しくしてくれたから救われたんです。ありがとうございました」
「ま、まさか会社辞める気か!?」
「辞めませんよ。真島主任みたいな立派な営業マンになってもいないのに」
「そ、そうか」
初めて出会った時から何故かずっとほっとけないんだよな、手嶋の事は。
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