第2話 可愛すぎる子犬が我が社にやってきた。ー真島side

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定時きっかりに仕事が終わったのは俺と手嶋だけだった。 「とりあえず、時間も余るしお茶でもしてくか」 「でしたら、スタパ行きません? 新作飲みたいんですよー!」 「ああ、構わないけど」 手嶋と俺は居酒屋の予約時間までカフェで過ごす事にした。 「真島主任、飲み物以外に何か頼まれます?」 「俺はいい。手嶋も飲み物だけにしとけ。居酒屋でたくさん食うんだから」 「はーい」 「新商品やたら甘そうだな」 「俺、甘いの大好きなんでー!」 「お子様舌だもんな」 「お子様舌じゃないもんっ」 「拗ねるな、拗ねるな」 手嶋が本性の甘ったれヤローになってからは俺も遠慮が無くなってきた。手嶋くんなんて呼んでた頃が遠い昔に感じる。 「真島主任はブラックですか?」 「ああ、俺はいつもコーヒー」 「ひゅーっ! おっとなー!」 「バカにしてるのか?」 けど、明日からゴールデンウィークで暫くこのアホとも会わないのか。 「明日からゴールデンウィークですね。真島主任と離れるの寂しいです」 「俺はせいせいするけどな」 「えっ!」 「毎日ワガママ言われ放題が無くなる」 「とか言って、いざ手嶋が離れたら寂しくなるんですよ! そうに決まってます!」 「なんだ、その自信は。とりあえず、社会人初めてのゴールデンウィークなんだから羽目外しすぎるなよ? 怪我、事故は起こさないよう」 「夏休み前の先生みたいですね!」 まぁ、数日間とは言えちょっとは寂しいかもな。 手嶋とは仲良くなってきたし、仲良くなりすぎてなめられてるようにも思うが。 「手嶋も実家帰るのか?」 「はい! 真島主任も横浜に帰るんですか?」 「ああ。犬の顔も見たいしな」 「あの壁紙のわんちゃんですね! 俺も会いたいし、真島主任について行こうかな」 「だめだ。お父さんお母さんに元気な顔見せてやれ」 「はーい」 こいつが甘ったれなのは母親と姉が原因って言ってたな。ゴールデンウィーク明け、さらに甘ったれになってたらやばいな。 「けど、無事に一カ月乗り切れて良かったです」 「へ?」 「就活の時も、入社したての時も不安でずっと胃が痛くて。真島主任が俺に優しくしてくれたから救われたんです。ありがとうございました」 「ま、まさか会社辞める気か!?」 「辞めませんよ。真島主任みたいな立派な営業マンになってもいないのに」 「そ、そうか」 初めて出会った時から何故かずっとほっとけないんだよな、手嶋の事は。
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