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「手嶋くんは優しいね」
「とは言え、俺も今は偉そうな事言えないけどね。どこ行っても世話焼かれちゃう」
「手嶋くんって世話焼きたくなる顔してるもん」
「それ、何百万回も聞くセリフだよ! 世話焼きたくなる顔かぁ。だから、女子達に男として見れないとか無いとか言われちゃうんだなぁ」
でも、まぁモテなくても良いんだけど。
俺が今一番欲しいのは真島主任の心だし。
難しいかもしれないけどっ。
「わ、私は手嶋くん魅力あると思うよ! だってまだ大学に友達いなくて心細くしてた私に話しかけてくれて……私、救われたからっ」
「俺も同じ講義受ける人居なくて寂しかったからね。いきなり話しかけて驚かせちゃったけど」
「ああ、私……高校まで女子校だったからね。けど、嬉しかったから。それから手嶋くんを介して繋がり増えたし」
なんだか照れくさいなぁ、そう言われると。
「社会人になってからもこうして会えるのって良いよね! 中学や高校の奴らよりも連絡取ってるし」
「うん!」
「また夏にでも海とか行きたいよね!」
「だね。ランドとかも」
「よし、後でみんなにメッセしよっか。主任に新入社員だからって遠慮せず有給取れってうるさく言われてるし」
とは言え、有給取ったら真島主任に会える日が減る!
「また主任さん……」
「相原さん?」
「あのさ……手嶋くん。その主任さんに本気なの? 10も上だし、上司なんだよ?」
「えっ?」
「正直辛いだけだと思う。諦めた方が良いんじゃないかな?」
「諦めるか決めるのは俺だから。心配してくれるのは分かるけど、無理」
「手嶋くん……?」
「諦めるなんて……そんな簡単な話じゃないよ」
自分が一番よく分かっている。
だけど、誰に何と言われても俺は真島主任を好きで居たい。簡単に諦めたくなんかない。
ずっとずっと会いたかったんだから。
「あ、私の家……ここだから」
「ああ、うん。次からは酔った時は無理して二次会参加せず早く帰らなきゃダメだよー?」
「ごめんね、迷惑かけて。あ、良ければウチに……」
「それは出来ないよ」
「え?」
「付き合ってない子の家に上がるわけにはいかないから、男として!」
「そ、そっか」
「うん。酔ってるんだから家でゆっくり休んでね。じゃあ、また!」
「ま、またね」
彼女の気持ちには薄々気付いていた。
俺に好意を向ける女子なんてたくさんはいないから何となく分かるんだ。
だけど、彼女の気持ちには応えられない。
俺は自分に嘘をつけない。
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