第4話 俺が部下と恋なんて。ー真島side

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ゴールデンウィークの間は殆ど実家で過ごした。途中、姪っ子を連れて中華街には行ったけど。 俺は真島家の長男として生まれた。父親は今や大手商社の役員、母は専業主婦をしている。 実家は神奈川県横浜市にある一軒家。俺が小学校低学年の時に父が買った。 帰省してすぐ無駄に広い庭の雑草取りや普段掃除できていない俺や弟がいた部屋の掃除をさせられた。 「はぁ、あんたが来て助かったけど……ゴールデンウィーク中、ずっとウチって……あんたさ、旅行に行くような彼女や友達居ないわけ?」 「最近ずっと仕事が忙しくてさ、新人教育もあるし……疲れてるんだよ。今年のゴールデンウィークは休まる事を優先した」 「まだ32じゃないの! はぁ、まさか翔があんたより先に結婚するとはね」 「あいつの場合はデキ婚だ」 「でも、良い奥さん貰ったからね、あの子は。あんたもいい加減所帯を持ちなさいよ!」 帰省する度、母はしつこく結婚は未だかと聞いてくる。 「あんたが何年か前に連れて来た同じ会社の美冬さん、良い子だったわよねー! 何で別れちゃうのかしら」 「別に良いだろ。翔が結婚して、孫の顔もしっかりと母さんに見せてるんだから」 「けど、心配なのよ! 私やお父さんの方が先に死ぬのよ? お母さん、お見合い相手見繕ってあげようか?」 「ほっといてくれよ。俺は大丈夫だから」 2年前、元カノと遠距離恋愛によるすれ違いで別れてから俺には一切浮いた話が無い。 同じ会社の女性社員から時々告白される事もあるが、正直好きの境地には達せず毎回断っている。 同期や同級生達はどんどん結婚し、子供もいる奴だっているのに俺は一人でいる事を貫いている。 長年一人暮らしをしていて、一人で生きていく生活を確立してしまったのもあると思う。 「ん? ウィル……」 実家で飼っている愛犬・ウィルが俺の膝に左足を乗せてきた。 「遊んで欲しいのか?」 ウィルはずっとくぅくぅ鳴いている。 「ああ、しまった。朝色々やっていたらウィルの散歩忘れていたわ」 「母さん……」 「あんた代わりに連れて行ってやってくれない?」 「はぁ、分かったよ。ウィルごめんなぁ。ずっと散歩行きたかったんだな?」 俺がリードを手に取ると、ウィルは尻尾を振り瞳を輝かせる。 うっ……この顔、すげぇ手嶋に似てる!
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