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目が覚めると、俺はベッドの中にいた。
「あら、目が覚めたわね! 良かったわー!」
俺が目覚めた瞬間、母親と同じ位の年齢に見える女性が声をかけてきた。
「あの……ここは?」
「本社の医務室よ。熱とかは無いみたいだから過労で倒れたようね。ちょっと待ってて頂戴ね。貴方が目覚めたら呼んでって真島くんに言われたから」
「えっ?」
医務室の担当者の女性は医務室から突然出て行き、誰かを呼びに行った。
そうだ、俺……倒れて通りすがりの男の人に助けて貰ったんだった。
「お、目覚めたか」
「あ……」
5分くらいすると、一人の30代くらいの男性社員が医務室に入って来た。
うわ、すごい美形な男性……睫毛長、肌白い、細い……なんか俳優さんみたい!
けど、声的にさっき俺を助けてくれた人だよね? 多分。
「目の前で急にぶっ倒れるからびっくりしたよ。もう大丈夫そうか?」
「は、はい。ご、ご迷惑をお掛けしてすみませんでした。ありがとうございます」
「君、就活生……だよな? 見たところ」
「へ? あ、はい」
「過労だろうって聞いたけど、何か無理したりしてたのか? アルバイトとか」
「あ、えっと……就活対策に夜更かししていて」
「夜更かし?」
「情けない話、他の友達と違って上手く行ってなくて」
何で初めて会ったこの人に素直に話してるんだろ、俺!
しかも、面接先の企業の人だよ!? もし、人事と繋がりある人だったらとか考えないわけ!?
「そっか。けど、無理しすぎるのも本末転倒だぞ。実際倒れちゃったし」
「す、すみませんっ!」
「けどまぁ、そんなに頑張っている君ならきっといつかは報われるよ」
「えっ?」
「大丈夫、大丈夫」
彼は優しく俺の頭を撫でる。
何これ、何で俺ドキドキしているんだ!?
相手が綺麗な男性だから!?
「あ、あの?」
「ごめん、馴れ馴れしかったな。そういえば君、名前は?」
「て、手嶋流唯……です」
「手嶋くんか。俺は真島響(ましまきょう)だ。手嶋と真島、何だか似ている名前だから親近感が湧くな」
「そう……ですね」
「けど、名前は流唯って言うのか」
あ、またからかわれちゃうかな。俺の名前って女の子みたいだってすぐからかわれるし。
「綺麗な名前だな」
「へ? あ、ありがとうございます」
からかわれなかったの初めてなんだけど。
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