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二次面接会場も同じ本社ビルだった。
こないだとは違い、個人面接で他の面接者と比べる事も無い為、落ち着いて面接を受ける事が出来た。
だけど、一度もあの人に会う事は無かった。
もしかしたら、本社の人じゃない可能性もあるよね。支社たくさんあるし。
それでも、出来る事ならまた会って話がしたい。
まぁ、二次面接の結果次第なんだけど。
そして、大学4年の冬。
「えーっ! 一人暮らしがしたい!?」
「うん、俺が配属されたのは東京支社でウチからだと時間も掛かるし……せめてもうちょっと交通の便が良い場所に住みたいなって」
無事に物流総合企業の二次面接を通過し、ようやく内定を貰えた俺は父と母に一人暮らしをさせて欲しいとお願いした。
「えーっ! そしたら、お父さん! 私達家族皆で都内に引っ越しを……」
「流唯、お前は何で一人暮らしがしたいんだ?」
「俺……自立したいんだ! 社会人になるからには! 父さんや母さんに甘えまくりじゃダメだって思って」
「そうか。父さんもそれについては同感だ」
「ちょっとお父さん!?」
「母さん、流唯の意思を尊重してあげないと。俺達だって歳だ、一生流唯の世話を焼いていられるとは限らない。お姉ちゃんだって就職を機に自立させたんだから」
母は予想通り、嫌がっているけど父は俺の気持ちを汲み取ってくれた。
「るぅくんと離れて暮らすなんて……」
「極端に遠い場所に引っ越すわけじゃないんだよ? 母さん」
「とりあえず、流唯。住む場所はどうするんだ?」
「安めのアパートいくつかネットで調べてあるから内見して決めようかなって」
「分かった。けど、セキュリティーがしっかりしたマンションの方が……」
「セキュリティーがしっかりした物件は高いし、父さん達に負担かけたくないから! アパートで!」
贅沢言うのにはまだ早い年だもん。
大手とは言え、新卒の初任給はそこまで多くはない。
大学卒業後、俺は会社の最寄駅から電車で20分の駅にあるアパートを借りた。
築年数は20年以上経っているけど、よく泊めてもらった大学の友達の住むアパートに雰囲気も近いし、古さや狭さは特に気にならなかった。
家族と離れて暮らすのは人生で初めてだから最初は不安だらけだけど……俺は自立するって決めたんだもん!
母に甘やかされまくりの甘ったれのだめだめ手嶋は卒業するんだ!
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