168人が本棚に入れています
本棚に追加
/133ページ
本棚には営業の本とお気に入りの少年漫画の数々。
狭い部屋でも畳んで仕舞えば邪魔にならない布団、家で使ってたテレビよりずっと小さいテレビ、小さな冷蔵庫にはたくさん詰められた母に持たされた食材やビール。
まだ物は少ないし、快適かって言われると微妙だけど住めば都って言うし!
新しい生活に胸を弾ませる。
一人暮らし自体よりも明日から始まる社会生活の方が不安極まりなかった。
長期のアルバイトでしごかれて辞めたような俺が会社員を長く続けられるんだろうか。
営業職って結構成績主義でブラックなとこも噂でよく聞くし。
だけど、あの人みたいな社員もいたし……。
出社初日に備えて営業の本読み込んだり、パソコンの使い方の基礎くらいは自主的に勉強しておいたけど。
「俺が配属される部署、良い人達ばかりだと良いけど……」
俺は手の中にあった空の飴の包み紙を見つめる。
機会があればあの人にも会えるのかな。
海外や地方の支社の人だったら望み薄だけど……。
「会いたいな……」
一度しか会ってないのにずっとあの人の事が忘れられないでいた。
まるで姉ちゃんに借りた少女漫画みたい。
漫画だったら一目惚れした相手と再会してドラマが展開されるけど、現実では厳しいかもしれない。
だって、相手は俺よりずっと年上に違いないし、男性……だもんな。
絶対彼女いるし……。
また会えるか分かりもしない人の事を考えて悶々とするのはおかしいよな。
結局、就活が終わってから友達に誘われて合コン行ったりもしたけど良い相手に巡り合えず。
ずっと心の中に彼を残したまま。
まぁ、再会出来なくても社内で他に好きな人が出来るかもしれないし……。
過度な期待はせずに出社しよう、うん!
最初のコメントを投稿しよう!