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「ええー! そうなんですか、すみませんでした。教えていただいてありがとうございます。親戚に言っておきますね」
言いながら彩未はだんだん腹が立ってきた。美津子さんは親切心で、伝えてくださっているのだろう。だけど、わざわざ電話して言うか? 谷田家だったら傷んでる部分だけをえぐって、美味しかったねーで終わりだ。相手の親戚の家で作ってるものだったらなおさら言わない。
「あの、お漬物、嬉しいんですけど、ほんとは、うちは黄色いたくあんが好きなんです。高級なやつはうちの口に合わないっていうか。はは。あ、もちろんお菓子が一番嬉しいんですけど」
「……」
彩未の行為は常識外れというものだろう。だが猛暑のなか、腰を痛めながら梨を収穫している親戚を貶されたように感じ、彩未はつい、言ってしまったのだった。
それから間もなくして、お歳暮を待たず久木家から、「京都のおいしい黄色いたくあん」が届いた。
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