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美津子さんは必ず「京都の」と頭に付ける。別にいいんだけど。番号表示されないから誰からの電話かわからず、つい適当に答えてしまった。向こうは、久木の人間と分かっているのになにこの態度、と思っているだろう。
「あっ、京都のお義母さま? ごぶさたしてますぅ~」
急いで、愛想よくする。母親が電話でいつも言ってるみたいに、自分の母親じゃないのに「お義母さま」と呼ぶ。
「あの、梨、届きましたの。みんなで、とっても美味しく戴きましたわ」
「あ、いやーそんな、どういたしまして。ソルベすっごく美味しかったですぅ~」
ソルベはすごく美味しかったと強調しておく。お菓子ばかりにしてもらえるように。
「それでね。言おうかどうか、もの凄く迷ったんですけど、やっぱり言っておいたほうがいいかしらと思って。あの、送って下さった梨の中に、ひとつ、傷んでいるのがあったんです。ほら果物って、ひとつ傷んでると、全体がどんどん傷んでくるでしょう? 彩未さんの御親戚のおうちで、他にも送っていらっしゃるのだったら、気を付けてあげたほうがいいのかしらと思って、お電話しましたの」
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