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キャンプ#2
「お姉さん! お姉さん! 大丈夫!? しっかりして!」
その声で私は目が覚めた。同時に、激しい頭痛と、喉の奥の焼けるような傷みを感じた。
私は、最高な一日を……。もう、こんな生活から逃げたくて……。
ぼんやりする意識の向こう側で、少年の声がする。少年の叫び声がうるさい。私は楽になりたいの……。お願いだから黙って……。
なんか、背中が痛い。私は車の中で、確か睡眠薬を飲んで……。
薄っすらと目を開けると、満天の星空と、不安そうに私の顔を覗き込む少年の顔が見えた。ここは車の中じゃない。私はジャージ姿で土の上に大の字で寝転がっていた。
隣には私の車と、そのもう少し向こうに、炭壺が蓋をした状態で置いてある。
「良かった。お姉さん、死んじゃってるかと思ったよ!!」
「あなた……だれ?」
私は擦り切れそうな喉の痛みを必死に堪えて、掠れた声で少年に尋ねた。
すると少年は、「ボクはタケルっていうんだよ。お姉さん、大丈夫?」と、しつこく聞いてくる。
私は少年に飲み物が欲しい事を伝えると、少年は私の車の中を漁って、お茶の入ったペットボトルを持って来た。私はそれを飲み干すと、少年に聞いた。
「ありがとうね。あなた、タケル君、こんな夜中に1人で来たの? こんな山奥に」
「そうだよ。ここ、近所なんだ。ここのキャンプ場には小さい頃から、よくお母さんと遊びに来てたんだ。今日は、流れ星がたくさん見えるって聞いて、それを観に来たんだよ」
そう言うと、タケルは私が無事な事に安心したのか、安堵の表情を浮かべると私の隣に大の字で寝転がった。
それから30分くらい、私達は空を見つめていた。流れ星を見つける度にタケルが声をあげる。ぼんやりとした意識が、徐々に鮮明になって来るのを感じた。
少し体調も落ち着いて来た。どうやら私は生きている。私を見つけた少年が、恐らく車から私を引きずり出してくれたのだろう。しかし、気になる事がたくさんあった。
「タケル君、どうしてこんな所にいるの?ここはキャンプ場だけど、もう何年も前に閉鎖したはずなのに。誰も居ない、こんな暗い所に来なくても、もっと下の方に新しいキャンプ場があったでしょ?」
するとタケルは、少し考えるような表情を見せてから、私の顔を見て呟いた。
「お姉さんと、同じ理由だよ。ボクも、ここで……」
そう言うと、タケルはショルダーバッグから一本のロープを取り出した。
「そう……」私は呟くと、タケルは再び大の字になって空を見ながら言った。
「僕の方が先に来てたんだ。それで、ちょうど良い高さの木の枝を探してた。そうしたらお姉さんが来るのが見えて、隠れてた。そうしたら、その、お姉さんが色々やっているのが見えて、しばらく見てた。」
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