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千年の時を駆けて
『私は大切な何かを忘れている。
心の隙間に僅かに引っかかる感情は私をゆっくりと蝕んでゆく。
疾うの昔に忘れた記憶なのだろうか。
それとも、忘れたくないと抗う記憶なのだろうか…。』
貴女はいつもそう言って悲しそうに俯くのですね。
今宵もまた思い出せない誰かの影を追って下を向くのですね。
私に向かって優しくそして美しく微笑む貴女は雪華のように儚く消え去るのですね。
どうか、どうか少しで良いので空を見上げてください。
昔私に微笑んだそのお顔をもう一度。
貴女の涙をもう見たくないのです。
袖を握る白く細い指先が赤く滲む。
怖いのですね。震えているのですね。
どうか忘れてください。
しがない浪士の事など。
愛する人すら守れなかった私の事など。
私の願いはただ一つ…
幸せに生きてほしい
今日も暗闇に光を散りばめましょう。
貴女がもう道に迷わぬように。
そうして私は今日も星を紡ぐのです。
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