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「嘘だろ。」
昇が小さな声が呟く。僕も声を失っていた。
長い沈黙があったような気がした。
我に帰ったとき、昇が呟いた。
「これ、監禁してたのか?」
風がないはずの部屋で、なぜか寒気を感じていた。
柵の扉であろう部分を押してみると鍵は壊れていて、簡単に開いた。
中に入ったところで床のシミ以外には何もない。
刑務所のような簡易的なトイレや水道だけがついていて、
床は冷たいコンクリートだった。
「須崎雄太が、誰を何の目的で監禁するっていうんだよ。」
僕自身頭の整理ができていない。
監禁するなら、今までの情報では一人しか考えられない。
ただそれをなんとなく、信じたくない気持ちがあった。
「でも入り口の暗証番号はリビングにあったんだろ?」
そう。
須崎雄太は少なくともこの場所を知られたくない、
と思って工作したということだ。
誰に隠したかったのだろうか。
そしてこのシミは何なのだろうか。
考えがまとまらない。目の前が揺れる。
柵に捕まろうとした手は宙をかき、そのまま倒れた。
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