取材14日目

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取材14日目

あれから半年が経った。 なんでそこまで日が空いたのか。 僕らが警察の事情聴取を受けていたからだ。 今でも後悔している。 あの日、幸人はあの場所で首を吊った状態で見つかった。 須崎雄太を探し続けた幸人の5年間は、あっけなさすぎる結末を迎えた。 僕らは警察にすべてを話した。 エリカが監禁されていたこと、 エリカを監禁していた人物は既にエリカに殺されたらしいこと。 冴島幸人はエリカが殺したことを知らず、 須崎雄太が亡くなっていることを知って自殺を図ったこと。 どこまで真実として処理されたのかはわからないが、 少なくとも一人の死者を出したことから連載は中止。 1年間の謹慎処分となり、依願退職を申し出た。 昇ともお互い距離を取るようになり、 抜け殻のようにして生きていたらいつの間にか冬が来て、 雪が降る2月になっていた。 電話が鳴った。 「白石百合」 その名前は、深くに沈み込んだ記憶を一瞬で蘇らせた。 冴島幸人が死んで、一連の事件が収束した後に一度会いすべてを話していた。 しかし無視するわけにもいかず、とりあえず喫茶店で会うことにした。 「お久しぶりです。また思い出させてしまうことになってすみません。 どうしてもお伝えしておきたくて。」 「大丈夫です。なんでしょう。」 「冴島幸人という名前がどうしても気になって、色々調べてみたんです。」 隣に置いた鞄から書類を出した。 そこには冴島幸人の顔写真と経歴が載っていた。 「実はエリカ、一度だけいじめられたことがあるんです。 中学受験の前の塾の合宿で、 初対面の男子が好意の裏返しで嫌がらせをしてきて、 しつこかったと聞いていました。」 「それが彼だと?」 「塾の合宿名簿は残っていませんでしたが、 当時の塾の全国模試ランキングで2人とも上位50名に名前がありました。」 「でも、それだけで断定はできません。」 「エリカがいたのは、塾の中でも最優秀のクラス、 全国模試の結果で編成が組まれるから、 そこのホテルで合宿をしていたのはそのクラスだけです。」 「だからって、その50名が同じクラスなら、 さらに多くの男子がいるんですよね?」 「確証はありません。でも冴島幸人さんと既に一度会っていたとしたら、 冴島幸人さんに対してなんらかの恨みを持っていたとしたら、 エリカが須崎雄太に近づいたのは意図的だったのかもしれない、 と思っただけです。」
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