取材最終日

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取材最終日

え、すっごく久しぶりに来てくれたと思ったら今日が最後なの?残念。 今はあなたしか来てくれないから、楽しみだったのに。 「以前までは、冴島幸人という人物が来ていましたね?」 うーん。言いたくないって言っちゃ、ダメかなあ。 「彼は半年前、遺体で見つかりました。」 あらそう。 「冗談だと思っていただいても構いません。 でも彼が亡くなって、あなたの嘘も暴かれて、 僕もこの場所を訪れる理由がなくなりました。今日ですべておしまいです。」 嘘?そっかあ。 じゃあさ、ネタバラシでもする? 「ネタバラシ?」 どうせならあなたの仮説が聞きたい。 「・・・わかりました。」 「あなたは高校3年生の時、推薦入試で12月に受験を終え、夜遊びを始めた。 通っていた予備校のアルバイトをしていた須崎雄太に誘われて。」 「何度か彼に連れられてクラブ通いをしているうちに、 彼と付き合うようになった。 彼が薬の売人であったことは知っていたのか、知らないふりをしていたのか。気づけばあなた自身も彼からもらう薬にハマっていった。 そして20歳になって、彼の指示で殺人を始めた。 恐らく殺人と薬物が等価交換だったのでは?殺人を行えば薬がもらえる。 あなたは薬の快感と殺人の快感を取り違え、 まるで自分が殺人鬼のサイコパスであると思うようになった。」 「しかし、殺人を躊躇いなく行えるようになる程、 須崎雄太の束縛がひどくなっていった。 いつしか彼の部屋で監禁状態におかれ、薬と殺人漬けの毎日を送っていた。」 「冴島幸人は店で知り合ったのち、 突然連絡が取れなくなったあなたを探していた。 そして須崎の家で監禁部屋の存在に気づいてしまった。 冴島幸人は須崎雄太に監禁のことを匂わせて脅し、 あなたを解放するよう迫った。 そこまでするのだから、幸人はあなたに恋愛感情を抱いていたのでは? 無事に自由の身となったあなたは、その後須崎雄太を殺した。 冴島はそのことを知らなかった。 その後、監禁のショックと薬の過剰服用による副作用から すべてを忘れたあなたは元の世界に戻って無差別な殺人を繰り返し、 逮捕された。 以上がことの顛末です。」 「冴島幸人は半年前、私と共に須崎雄太の家に行きました。 監禁部屋のことは知っていたし、 私たちが気づくとも思わなかったのでしょう。 しかし我々は監禁部屋に気づき、 不覚にも冴島幸人にそのことを話してしまった。 そこには、須崎雄太のものと思われる血溜まりの跡があったことも。 そして冴島さんは、自分が探していた須崎雄太が もうこの世にいないことを悟ったのでしょう。」 「どうですか?」 概ね正解、なのかしら。 「なぜ、須崎雄太を殺したんですか?」 なぜって、邪魔だったからよ。 「でもあなたは包丁マニアではなく、ただの麻薬中毒者のはずです。」 さあ?そんなの私にもわからないわ。 どちらが私に快感を与えていたかなんて。 ただ監禁されていたのは事実だし、 監禁から逃れた後は薬に頼ることなく生きてきた。 だから私は本当に包丁マニアになったのかもね。
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