取材最終日

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「長い間、ありがとうございました。」 こちらこそ。 「あ。」 なに? 「冴島幸人さんとは、小学生の時に一度会っているようですね。」 そんなことまで調べたの?あなたって本当に物好きね。 「覚えていますか?」 それはご想像にお任せするわ。 そういえばさっきの、少しだけ思い違いがあるとすれば、 私の根本にある理性を理解していないみたいね。 「理性?」 そう。あなたが一生わからないであろうことを教えてあげるわ。 優等生ってね、自分の中で抑圧された何かに気づかないまま大人になるの。 そして、隠すのが上手くなる。 本当に限界まで押さえ込んだ我慢や不安や恐怖にも気づかず、 ポーカーフェイスで交わすことができる。 そういうのがトラウマとして積み重なって、 私の心の中に邪魔な異物が蔓延るのよ。 邪魔なものを殺して無くしていくことを知ってから、 小さな邪魔者がどんどん気になり出してさ、 そんな時たまたま目の前に邪魔なものが現れたから、私は殺して行っただけ。 最後に一つだけ、冴島幸人を、殺してくれてありがとう。
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