取材4日目

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取材4日目

殺意について?殺意かぁ。難しいこと聞くね。 例えばさ、ネットで人を馬鹿にする発言をした人がいたとする。 馬鹿にされた人が被害者だと定義されて、 馬鹿にする発言をした人は加害者になる。 みんなは被害者を擁護し、加害者を叩く。 そのみんなは誰なのかしら。 それこそ被害者のことには触れず、加害者に「死ね」とかすぐ言うでしょ? 実際に二人の間に何があるかなんてわからない。 ネット以外の場所ではもしかしたらすごく仲がいいのかもしれない。 あれ本当によくない風潮だと思う。 言葉の暴力とはまた別の、人に対してネットを介すれば殺意を持っていいって言う矛盾よ。 殺意は実行しなければ無罪なの? 燻った歪んだ正義感で人に対して殺意を持った人が のうのうと暮らしてることのほうがよっぽど恐ろしいことだと思うけどね。 私にとって殺意ってそういうものかな。 人や物事に対しての異常な執着。深く入れ込みすぎるみたいな。 そういう真っ直ぐすぎるものかなって思うの。 対して、物事って大抵どっちかが完全悪なんてことないでしょ? 誰しも事情がある。感情がある。 だから、殺意って持つこと自体がおかしいんじゃないかなって。 それに対して言えば、私は殺意なんてないの。 人を殺したいと思ったこともないし、憎んだこともない。 なんて言うんだろうなあ。ずっと考えてるけどいい例えが思いつかない。 あなたすごく好きなこととか、いつも頭から離れないこと、ある? スマホとかタバコとか、なんでもいい。 ああ、あなた喫煙者なのね。じゃあそれにしよう。 タバコを一本吸い終わったとき、落ち着いた状態になるわよね。 それで一定の時間は保つ。 でもある程度時間が経つと、ふとタバコが吸いたくなる。 タバコを探す。どうすれば吸えるか考える。吸いに行く。そんな感じかしら。 私にとってあの行為はそれと同じなの。すっきりして落ち着く。 一定時間経ったとか、それを連想させるようなものを見つけると、 突然血が騒ぎ出す。手元に解消できるものはない。 どうすればいいかを考え続ける。 気づいたら包丁を買っていて、気づいたら何かを刺しているの。 そうしたら落ち着く。その繰り返し。 初めて刺すってことを味わうまでは、ずっと何かに怯えて苦しんでた。 毎日何かに対する不満を抱えていたし、すごく暗い性格だったの。 それが刺すようになって本当に変わった。 こんなにも世界が輝いて見えるんだって思った。 それからはしばらく刺すって感覚を味わってないと不安になるし、 実際に体が震えたりするようになった。 だから繰り返し人を刺すようになったの。 ここに入るまではずっと、そんな生活を繰り返していたわ。 そう言えば今思い出したんだけど、 この間、警察の人に薬物を摂取したことはありますか?って聞かれたの。 そんな経験一度もないのに、症状がそれに似ていますって言うのよ。 私にとって包丁で人を刺すことは麻薬なのかしら。 それもそれでロマンティックじゃない?
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