GAME OVER

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GAME OVER

 燃えるように赤く染まった空の下、薄暗い街の冷たそうな空気に数多の血と肉片が混ざり合い、踊り狂っていた。  チカ、……チカチカ、と壊れた信号機の赤い光が不規則に点滅する。  ロイヤルは興奮で身震いを起こしながら絶叫し、信号機の下で矢継ぎ早に襲い掛かってくるゾンビに機関銃をぶっ放していた。  ロイヤルの攻撃を受けたゾンビの頭が、まるでザクロが弾けるように破裂する。  すると、ロイヤルが羽織っているミリタリージャケットの袖にゾンビの目玉が転がり、ゾンビの死体が重なる地面に落ちていった。   口がひしゃげたゾンビ、腕や足があらぬ方向へ折れたゾンビ、爛れた皮膚が伸びて削げ落ちた肉片をぶら下げているゾンビ。  どれも人間の形をしている化け物だ。  錯覚する。  相手はゾンビなのに、形が似ているせいで本物の人間を殺しているようだ。  ロイヤルは、ゾンビの返り血と肉片がこびりついた顔を皮肉気に歪ませる。  そのとき、耳元に低い声が聞こえてきた。  遊んでいないで役目を果たせ、と。  これから永遠に遊び続けられるのだから、と。  わかっている。  信じていないわけじゃない。  信じたい。  信じてる。  しかし、ロイヤルはどうしようもない不安に駆られてしまう。  弾切れになった機関銃を捨てて背を向けて走り出す。   〈もう少し遊ばせて〉  そう力なく呟くも、当然ながら返答は否だ。  ロイヤルは、ゆっくりと勢いを殺して立ち止り、緑色の肌をした自分の手のひらを見つめて群青色の瞳を閉じた。  背後からのそのそと鈍間なゾンビが追いかけてくる。  人ならぬ悍ましいゾンビの叫び声が、地面の砂を引きずる音と共に近づいてくる。  無意識に息が荒くなる。  成功するのか、失敗するのか。  自分の命がかかっている。  だけど、卑怯なことをしてきた自分が命を惜しく思うのは間違いだ。  ロイヤルは、瞳を薄く開けて恐怖を払拭するように無理やり微笑んだ。  どうせ、現実に自分の居場所なんてない。  頭の悪い自分のことを認めない父親、父親の機嫌ばかり伺う母親、標準語をしゃべれなかった自分を馬鹿にした同級生。  僕は、誰一人として自分のことを見ようとしない現実を捨ててやるんだ。   ロイヤルが思い出すのは、小学校の頃の思い出。  今思えばあのころが一番楽しかったかもしれない。 『笑っとったらええやん』  彼は今も自分の言葉を信じて笑っているだろうか。  苦しめばいい、と思った呪いの言葉を信じているのだろうか。  僕は嫌いだったんだ。  傷ついても悲しことがあっても、幸せを手にしていたお前が嫌いだったんだよ、仁生(ひとせ)。  ロイヤルは力なく笑う。    一体のゾンビがロイヤルの肩を掴んだのが合図となって、無数のゾンビが蛆虫のようにロイヤルの身体を蝕んだ。  瞬間、ロイヤルの――雅希(まさき)の頭に雷が落ちたかのような衝撃が突き抜ける。  どうか、もう一度――。  遠のく意識の中で願い事を紡いだ雅希は、現実の世界で息絶えた。
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