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お願いだから消してほしい
何度か灯里に画像削除を求めても、色よい返事はもらえなかった。
おっとりと物静かな灯里だが、性格は頑固なようである。
ほぼ初対面と言っていい。
こんなよく知らない男とのツーショット写真を消したくないとは、どういう心境なのだろう。
単純に消したくない、とか?
『消したくない』ということであれば、少なからず好意的な気持ちがあると認識していいのか。
いやいや、これは自分に都合の良すぎる解釈だ。
しかし、この都合の良すぎる解釈以外で考えられる理由を考えると悍ましい理由しか残らない。
何かに利用される。
何かの脅しに使われる。
「…………」
想像するだけで胸のあたりが、ひゅっと冷たくなる気がした。
何としても消してもらわんと!
「お願いです、消してください……!」
「…………嫌」
羽田空港に到着するまで、加賀は子守唄を聞き続けている子供のように眠り続け、仁生と灯里は意味のないやり取りを何度も繰り返した。
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