マスクの下の

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腹の虫と共に、やたらと校内中に響くチャイムが鳴った。その瞬間、椅子に大人しく座っていた全員がガタガタと動きだす。購買へ走る奴。机をつけ始める奴。本を見ながら音楽を聴きながら、それぞれが昼食を摂る。俺はそんな教室を抜け出して、隣の棟の空き教室へと足を進めた。 「おせーぞ。三崎。」 「悪い。先生に捕まって…」 既に完成している机の島に、弁当袋を乗せる。 1年の時にクラスが一緒だったことをきっかけに、ただ一緒に昼食を囲む男女3人ずつのグループ。ありきたりな話で、ありきたりのメンバーだ。 -その中の誰かが、誰かに片思いしているというのも。 (あ-…。今日も可愛い……。) 春風と一緒になびく髪と、談笑と食事に勤しむ口を横目で見ながら、冷たくなったハンバーグを口に放り込んだ。 「そういや、三崎最近マスク外さないね。」 別の話題で盛り上がっていた1人の女子が、突然俺に矢を放った。 「いや、俺花粉症だし…。」 「でもご飯食べてる時もずっと顎にあんじゃん。邪魔じゃない?」 「確かに。花粉症なら外してよくね?」 彼女にのっかり、みんな口々に喋りながら俺の顔を見る。 いたたまれなくなり、なにか喋ろうとした瞬間、隣の奴が突然大きな声を上げた。 「あ゙〜〜〜〜!!!!ニキビ潰れた!!!!!!!」 「………え?」 思わず自分のかと顔を確認しかけたが、そいつが「誰かティッシュくれ〜」とさまよい始める。よく見ると、額に赤い点が浮かんでいた。 道理でさっきから静かだったんだな。 「あ〜あ。ニキビ潰すと痕になるんだよ?」 「仕方ないじゃん…。気になって触っちゃうんだよ……。」 ぐずぐず、と泣き真似をしながら潰れたところをティッシュで抑える姿を見て分かるぞ…。と心の中で呟いた。 「私、中学の時に皮膚科行ったら割とニキビ治ったよ。」 周りの様子を見ていた彼女が、おかずを飲み込みながら言った。 彼女にもニキビあったのか…という驚きと、皮膚科は考えてなかったなという驚き。 彼女が鏡の前でうんうん悩んでいる姿もまた可愛いんだろうな…なんて妄想に浸っていると、用済みになったティッシュをゴミ箱に捨てながら隣の奴が不満げに唸った。 「でも、なんかニキビくらいで病院って負けた気がするんだよな。」 しかも男で。とボソボソ呟きながら残りの白米をつまむ。 確かに、女子ならまだしも男子でニキビに悩み、皮膚科に行くのはなんだが恥ずかしい気がする。 俺にはもう周りの声は聞こえておらず、1人悶々と悩んでいた。
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