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岸から数十メートル離れた時だった。
それまで死角になっていた船着場へ下っているスロープが、ちょうど視界に入り、その中ほどにバイクに跨がったまま、こちらをじっと眺めているタンクトップに短パン姿の少年の影があった。
それは確かにアンドレだった。
僕は思わず手スリから身を乗り出して、左手を大きく振り上げた。
彼もまた、それに呼応して手を揚げたが、さすがに遠すぎて、その表情までは読み取ることができなかった。
やがて、手を下したアンドレは自分の冷えた身体をさするような動作をした後、そのままバイクに乗って、一気にスロープを駆け上がっていった。
その先にあの虹が架かっていたなら、それさえも軽く駆け上がってしまうのではと思うくらいの凄まじい勢いで、アンドレは僕の視界から消えていった。
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