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トバ湖の虹
一
アンドレのことを書きたい。
そう思い始めてから随分と長い時間が経ってしまった。当時、まだ少年だった彼も、今ではもう、二十歳前後の立派な青年になっているはずだ。
現在アンドレがどこにいて、何をしているのか?僕にそれを知る術は何も無い。ただ一つだけ、はっきりしていること。
それは、かつて僕と彼との間に横たわっていた大きな淵が、依然底知れぬ深い闇をたたえたまま、そこに存在し続けているということだった。
あの時、アンドレの罪を裁かなかったことが、その最大の原因であることを僕は自覚していた。
生まれや立場といった境遇の違いを越えて、人が理解し合うことの難しさを、彼は自ら罪を重ねることで僕に突き付けてきたのだ。
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