33人が本棚に入れています
本棚に追加
その場で彼を裁くことは、その気になれば簡単なことだった。しかし、この世の中は一人の少年を安易に吊るし上げられるほど、正義や理性で満ちあふれているわけではなかった。
僕の目から見れば、世の中はむしろ、頑に変わることを拒みつづけるものと、諦めで誰も感じることの無くなった理不尽が、その大半を支配しているように思われた。
そこには多くの人間の運命を予め決定づけたヒエラルキーを体現する不動のピラミッドがそびえ立っている。
その中でアンドレは罪を重ねながらも、変わること、伸し上がることを強く指向していた。
そして、僕はそんな彼の姿に、自分が遠い過去のどこかで心を奪われ、今もなお追い求めているモノの影を見たのだ。
最初のコメントを投稿しよう!