トバ湖の虹

二

　インドネシアのスマトラ島に、トバ湖という景勝地がある。島北部の州都メダンから、車で四時間ほどいった山間部に、その湖は存在する。琵琶湖の約二倍の面積をもち、水深は四百メートル。インドネシア最大のカルデラ湖だ。

　湖の中程には『サモシール』という名の島があり、大きさはほぼシンガポール島に相等するらしい。

　通常ほとんどの旅行者は、その島へ船で渡って、宿を確保しているようだった。

　僕が湖のほとりの街パラパッに到着したのは、午後の二時を少し回った頃だったが、これから船を待って島へ渡ったとしたら、順調に宿が見つかったとしても、それなりに遅い時間になってしまうだろう。

　そうなれば、条件の良い安い部屋は余り期待できない。乗合いバスの故障など不確定な要因もあったが、メダンの街を出発するのが少々遅すぎたようだ。

まあ、急ぐ旅でもない。