トバ湖の虹

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 僕は早々にその日のうちに島へ渡るのを諦め、パラパッの船着場の近くで宿をとることにした。  部屋はすんなりと取れたが、僕以外の客は何故か殆どがインドネシア人の家族連れや、若者の集団だった。  陽気な彼らは場所を選ばずに、終始歌を唱い続けていた。ギターの伴奏付きで、フォークソングらしき歌を立続けに熱唱しているのだ。  しかも、それが一組や二組ではなく、よく耳をそばだてていると、壁の向こう側や階下からだけでなく、両隣りや向かいの宿からも、ギターの音色と歌声が響いて来ていた。  宿に入って少し休むつもりでいたのだが、これでは話にならない。僕は安息の場所を求めて、カメラバックを抱え戸外へ出た。
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