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「男なんてチョロイもんよ? ちょっと甘えてあげるだけで何でも言う事聞いてくれるし」
サキュバスちゃんがワイングラスを傾けながら笑っている。
「あんたもさ~夢魔なんでしょ? そろそろ男の味くらい知ったら? まぁ、あんたみたいなイモくさい女は無理か~キャハハ!」
「ちょっとリリスちゃん。飲み過ぎじゃない? でも……言いたいことは分かるわ。教会の屋根裏に住み着いてる処女の夢魔って……」
リリスちゃんがニヤニヤと意地悪い顔でワインをグラスに注いでいる。
何でよりによってこの二人に捕まってしまったのだろうか。
週に一回の買い物の日。
山の中の誰も住んでいない教会に住んでいると、どうしても生活必需品が足りなくなってしまうでこうやってたまに街に降りてきては買い物をして教会に帰る生活をしている。
もうどのくらいこんな生活をしているのかは忘れてしまったけど、少なくとも物心がついたころからこうだった。
こんな生活を続けている中で、出会ったのがこの二人だ。
サキュバスちゃんとリリスちゃん。
二人とも夢魔の仲間で、最初は仲間に出会えたという思いで嬉しかったのだが……。
「そもそもさぁ、やっぱり見た目が悪いわよね。あんた。いつまでも素顔だし服も地味でさぁ……もっと男が好きそうな媚びた姿に変化でもしたら?」
「案外、今の地味な眼鏡姿でも十分男捕まえられるって思ってたりしてね! キャハハ!」
「プッ、リリスちゃん、それウケる」
二人には私が……その……男性経験が無いことを直ぐに見破られた。
同じ夢魔同士、何か分かることがあったのだろう。
「なんなら、私が今から男捕まえてこよっか? でチャチャっと経験してきたら?」
「でもでも~あんたみたいな地味女で喜んでくれる男、いるのかしら? あんたが男を喜ばせることが出来るならいいんだけど……まぁ~無理そうだしね。キャハハ!」
「も~リリスちゃんったら……まぁ男が喜ばなくても無理やりやっちゃいなよ? じゃないとそんなチャンス巡ってこないんだし。プッ」
いつも通りとはいえ、失敬な事ばかり言う二人。
確かに二人の言うとおり、夢魔なのに男性経験がないのは駄目な事なのかもしれない。
でも、何というか……そういう行為は、ちゃんと添い遂げてもいいと思える男性とじゃないと嫌だな。
そしてそれは人生の中で、たった一人いればいい。
……我ながらちょっと考えが古いのだろうか。こんな重たい女だから嫌われてしまうのだろうか。
「ん~ゴメンな。今日、ウチちょっと急いでんねん。ほな、またね」
「あら、連れないわねぇ。田舎娘ちゃん」
「次はもっと派手な格好しておいでよ? 地味眼鏡ちゃん。キャハハ!」
二人から逃げるようにしてバーを出た。
彼女たちの笑い声を背中に受けながら、私は帰路についたのだった。
そして今に至る、というわけだ。
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