白いワンピースの女

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白いワンピースの女

 俺は昔から、いわゆる「ホラー系」のものが苦手だった。ドラマや映画はもちろん、お化け屋敷などの娯楽も含めて、子供の頃から30近い今になっても一貫して得意ではない。一人では当然そういったものには触れないようにしていたし、誰かに誘われても平静を装いつつ内心では確固たる意志を持って避けてきた。  それでも今日は何故か、飲み会から帰って点けたテレビでたまたまやっていた、有名な日本のホラー映画を観てしまった。  「怖いもの見たさ」という感情は非常に不思議だと思う。本来は嫌いなもので、一人暮らしの俺は観た後確実に後悔すると分かっていながら、それでもその場は「見たい、知りたい」と思ってしまう。少し酔っていて気が大きくなっていたのか、軽い気持ちで観始めたその映画を結局最後まで観て、観終わる頃には酔いは醒め、ちゃんと怖がって肝は冷えて、すぐに後悔した。  そして何とか自分を誤魔化しながら風呂に入り、ようやく気分が落ち着いてきた頃に突然背後で大きな物音がすれば、大の大人でも思わずびくりと身体が動いてしまう。  普段の俺は、例えば多少の家鳴(やな)りをいちいち気にしたりはせず、幽霊などという非科学的な存在は本当にいるかどうかはさておき、自分には縁遠いものだと勝手に考えている。考えても分からないことを考えても仕方がない、という至極冷静な判断を、自然と行っているのである。  しかし今の俺は、明らかに普段の俺ではなかった。突然の物音に非科学的な存在を過剰に意識した俺は、脱衣所でドライヤーをかけている最中に背後で倒れた棚の時計に向かって、声をかけてしまったのだ。 「…誰かいるのか?」
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