流れ星を信じて

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 願いとは何も将来なりたいものだけではない。小学生の頃よく神社にお参りに行った。賽銭を投げ入れガラガラと鐘を鳴らし、親に倣って手を合わせ祈願する。 「何祈ったの?」  ウーンと少し躊躇ってから私は答えた。 「お金持ちになれますように」  親から顔を背けたものの、赤面を隠せたかどうかは分からない。 『加奈(かな)ちゃんと結婚できますように。加奈ちゃんと結婚できますように……』  当時の私の願いなどそんなものだった。  「お義母さん、遅くなってすみません」  玄関に出迎えてくれた義母に私は頭を下げた。あれから急な仕事が入り、夜もすっかり更けてしまった。 「いいのよ、あなただって大変なんだから」  義母は妻に似て朗らかだ。そのため本来なら預かってもらうのも気が引けるのだが、ついつい甘えてしまう。 「美菜は?」 「疲れてぐっすり寝てるみたい。今日は泊ってらしたら?」  美菜を起こすのもあれなのでお言葉に甘えさせてもらうことにした。  夕飯をご馳走になっていると、義母は何かを思い出したように席を立った。それから一枚の絵を手に戻って来た。 「私が迎えに行ったとき、まだこの絵を書いてたのよ。絶対に描き切るんだって言うことを聞かなかったらしくて。あの美菜がよ? 珍しいでしょ? だから先生もしばらく居ていいですよって特別認めてくれて。私もついさっき帰って来たばっかりなのよ。……それで疲れて眠っちゃったのね」  驚きつつも、それはすみませんと私は頭を下げた。それから例の絵を手に取った。  それは大きな流れ星に、女の子、おそらく美菜が手を合わせている絵だった。 「何か意味があるのかしら」  首を傾げる義母をよそに、私にはこの間の出来事が脳裏によみがえっていた。
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