流れ星を信じて

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 「美菜がいないのよ!」  仕事をそろそろ切り上げ、いつも通り義母の所まで迎えに行こうとしていた矢先、義母から電話が入った。  話によると、幼稚園から帰って少し目を離した隙に美菜はいなくなったという。しかし慌てふためく義母に対し、私は思いのほか落ち着いていた。 「お義母さん、大丈夫です。僕に思い当たる節があります」  愛娘が失踪したというのに、私は行き先に確信があった。  30分後、私も義母に電話で告げた場所へ駆け付けた。実は美菜に流れ星の本を読み聞かせた時に、おばあちゃんちの近くの公園は星がよく見えると教えていたのだ。 「美菜」  私は努めて優しく声をかけた。  しかし美菜は下を向いており、一向に顔を上げようとはしない。義母は首を振った。 「美菜、怒らないから大丈夫だよ。お星さまにお願いしようとしてたんでしょ」  図星を突かれてか、美菜は驚いて顔を上げた。私は精いっぱいの笑みを見せる。 「あのね、美菜、流れ星にお願いしようとしたの。でも、3回言えなかったの」  言うが早いか美菜の顔がクシャッと歪んだ。目には涙が溢れている。  次第に美菜が嗚咽をあげて泣き始めたので、私はここのところ考えていたことを口にした。 「気持ちは分かったよ、美菜。3回言えるくらい流れ星を降らせればいいんだろう? パパに任せて」  その言葉に美菜はゆっくりと顔を上げたので、私はウインクしてみせた。
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