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偽物の父は相変わらず黙っている。その態度に業を煮やしてか、私はハァハァと息が荒くなってきた。腹が立つと抑えることができない。私もカッとなりやすい漁師の血を継いでいるのだろうか。
「母と一緒にでもなりたかったのかな。だから父が邪魔で、殺したのか? よくも俺の前でのうのうと生きて来れたな。ああ、ちゃんと全部調べたさ。新聞記事から何までね。もう20年近く前のことだからかなり苦労したけどさ。全ては俺に時間を与えてくれたおかげだよ」
私は勝ち誇ったように言うべきことを言いきった。ガキの頃から感じ続けていたモヤモヤを、ついに晴らすことができたのだ。
ずっと黙っていた狩谷はとうとう口を開けた。人殺しと呼んだ時青ざめていた顔も、今は冷静さを取り戻しているように見える。
「いずれは話すつもりだった。お前が卒業して、漁師になった時に言おうと思っていた。しかしお前のお父さんへの思いがそれほど強かったとは。まさか大学出たい理由がそんなことのためだったとは……」
言い終わると同時に狩谷はゆっくりと立ち上がり、別室へと歩いて行った。それからしばらくして、たくさんのアルバムを抱えて戻って来た。
「しかしまさか殺人者呼ばわりされるとは思っていなかったが」
狩谷はその時の真相を訥々と話し始めた。
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