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流星群に紛れるようにして、謎の白い光がすうっといくつも落ちてきていた。
その光は、貴史たちの周りで空を見上げる人々の口の中に入っていく。
隣の、いい香りのする綺麗な女性にも、その光は入っていった。
女性はふいに無表情で立ち上がると、
「チキュウハ、イイトコロダ」
と無機質な声で言った。
そして貴史が聞き返す間もなく、女性はゆらゆらと何処かへ歩き去って行った。
気付くと、その女性だけではなかった。
周りの複数の人々が、同じようなおぼつかない足取りでその場を去っていく。
「おい、なんかやばくないか?」
秀が不安げに辺りを見渡した。
「帰ろうぜ」
貴史はそう言うと、帰り支度を手早くして秀と別れた。
家に帰ると、母親が半狂乱になってあちこちに電話していた。
家の屋上で天体観測していた貴史の兄が、
「チキュウハ、イイトコロダ」
と言い残して家を出て行ったきり、音信不通だという。
「普通じゃなかったのよ、何かに乗り移られたみたいな」
母親の言葉に、貴史は公園での女性を思い出していた。
あれは確かに、普通じゃなかった。
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