ファーストコンタクト

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ファーストコンタクト

「落としたよ。」 「・・・。」 振り向いた少女の目は、見た目から伺える年齢ではとうていすることのないであろう、淀んだ目をしていた。 僕の名前は水奈瀬コウ。どこにでもよくいる学校の教師だ。最近不思議な出来事に遭遇した。 休みの日に道を歩いていると、急に目の前に高校生くらいの少女が出てきて、食糧として連れて行くと言われたり、その少女が家に入り浸るようになったりしていた。 そして今回も、落とし物を拾ってあげただけなのに、また不思議なことに巻き込まれる。そんな予感を抱いていた。 「おおきに。」 (関西弁?ここらへんでは珍しいな。) 僕が落とし物を渡すと、少女は淀んだ瞳と無表情を浮かべながら受け取った。 「旅行にでも来てるのかい?」 「いや、少し前に越してきた。」 「そうか。お母さんやお父さんは一緒じゃないのかい?」 「一人やけど。」 「そうなのか。それじゃあ、僕はもう行くから、気をつけるんだぞ。ここらでも、不審者とか、盗人とかはいるだろうからな。」 少女は無表情のまま、頷きもせず、じっとコウの顔を見ていた。 「じゃあな。」 これが、僕と彼女の最初の出会いだった。 こんななんでもない一期一会から、こんなに長い間付き合いをもつことになるとは、このときはまだ、思っていなかった。
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