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ほぼ例年通りに梅雨入りを迎えた今年の六月。
いつもであれば、ジメジメして何となく気怠く過ごしていたこの時期だったが、今年の俺……つまり高遠颯斗は違っていた。
何故ならば、恋人である超人気俳優龍ヶ崎翔琉と、世間には秘密の蜜月関係が続行中だからだ。
一度、翔琉の取材現場で愛の告白劇を俺たちは関係者前で繰り広げてしまった。そのせいで、いよいよこの関係が世間へ暴露され、大勢いる翔琉のファンに俺は串刺しにされるのではないか。直後は、そのような大きな懸念もあったが、今のところは何事もなく平穏無事に暮らすことができている。
そのせいで、つい俺はうっかりしていたのだ。
俺に出逢う前の翔琉がどのような人物で、どのような生活を送ってきた人物なのかを。
うっすら恐れていた出来事が、まさかこんな形で現実に訪れるなんて……。
浮かれていたこの時の俺には、全く想像もしなかったのである。
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