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まだ燃え上がるような愛も恋も何一つ知らない梨音の瞳を、紫澤の手が咄嗟に背後から隠す。 「なんで、おめめくらくなったの?」 不思議そうに梨音が尋ね、ふぅと紫澤は軽く溜息をつき、馬鹿馬鹿しいとばかりにこう言った。 「――いつの間に、あなたたちは公衆の面前でもイチャつく仲になったんですか」 「いつの間にも何も、最初から俺たちはそういう(、、、、)仲なんだが」 悪びれもなくしれっと告げる翔琉は、今度は俺の右頬へとキスを落とす。 「小さい子がいますし、僕だっているんですから少しは自制してください」 眉間に皺を寄せた告げた紫澤に、益々翔琉は煽るように、啄むような軽いキスを俺の顔の至るところに降らしていく。 俺はその執拗な行為に、迫り来る翔琉に顔を背け、嫌がるフリをする。だが、本心では密かに悦びと愛されるむず痒さを感じていた。 「だいたい、高遠君へとそんなにも愛を囁くのに、あなたを“パパ”呼ばわりする同じ瞳の色をしているこの子は、一体何者なんですか?」 誰もが疑問を感じていたことを、とうとう紫澤が口にする。 俺へキスする為に上体を折り曲げていた翔琉は、不意に身体を起こすと、色素薄い茶褐色の髪をかきあげ、難しい表情を浮かべていた。 翔琉のその表情に、二人はやはり、人には言えない類の関係なのではないだろうか。 つい俺は悪い方へと勘繰ってしまい、きゅうと唇を噛み全身を硬直させる。
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