プロローグ ◆小さなパン屋さん◆

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小さなパン屋minamiは、琴葉の父親のこだわりの店舗だ。 オープンなスペースではなくショーケースから選ぶスタイル。それは衛生面だけでなく、客とふれ合い生の声を聞きより良い店作りを目指すという、お客様に寄り添ったスタイルなのだ。 父がパンを焼いて母が接客をする。 琴葉はその手伝いをしていた。 将来は自分もパン屋になる。 父親の後を継ぐという意味は全くなく、父のような温かいお店で美味しいパンを提供したいという、そんな純粋な夢だった。 パンの専門学校に通う傍ら、店に入るときは父からも学び、愛想のいい母からは接客の仕方まで習った。 専門学校を卒業したら父の店で働くか、それとも外のパン屋に就職するか悩んだ。父からはここでそのまま働いていいと言われていたからだ。 けれど琴葉は、外のパン屋へ就職することを選択した。 自分の家以外のパン屋で修行を積んで、見聞を広げたいと思ったからだ。 そんな想いであくせく働きだした頃、予想だにしない事態が起こった。 両親が亡くなったのだ。
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