プロローグ ◆小さなパン屋さん◆

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それは大きな事故だった。 建設現場でクレーンが倒れ、通行人を巻き込んだ重大事故。 その通行人の中に、琴葉の両親がいた。 ちょうどminamiが休業日のことだった。 茫然自失となる琴葉を励ましてくれたのは、ご近所さんでありminamiの常連客たちだった。 minamiのパンが好き。 そう言ってくれる人のためにお店を続けよう。 そんな想いだけでがむしゃらに働くこと早四年。 悲しさや寂しさを忘れたわけではない。 ただ、パンをこねたり成形している時は無心になれるので、そんな気持ちを忘れることができた。 それに、お客様の笑顔が元気の源だと琴葉は感じている。 自分を必要としてくれる人たちに美味しいパンを届けたい。 誰かがminamiのパンを美味しいと言って食べてくれる。 それがとても嬉しくて心の支えになっている。
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