プロローグ ◆小さなパン屋さん◆

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プロローグ ◆小さなパン屋さん◆

幹線道路から少し奥まった住宅地の片隅に、控えめな立看板がある。 可愛らしい手書きのようなあたたかい字体で【小さなパン屋さん minami】と書かれていた。 ガラス張りで明るい入口は大きく開けていて気軽に入りやすく、また、外には木目の柔らかい木のベンチが設えられている。 中に入ると、パン屋にしては狭いスペースしかなく、代わりに大きなショーケースが出迎えてくれる。 オープンなパン屋と違って、ここは珍しくショーケースから選ぶスタイルのパン屋だ。それはさながら洋菓子店のように。 「琴葉ちゃん、おはよう」 開店と同時に入ってきたのは近所に住む女性だ。 「おはようございます、おばあちゃん」 小さなパン屋minamiの店主、南部琴葉は明るい挨拶と共にとびきりの笑顔を見せた。 「いつものいただくわ」 「はい、かしこまりました。お待ちくださいね」 琴葉はショーケースからコッペパンを二つトレーにのせると、紙袋に丁寧に詰めた。 「焼きたてなので少し袋の口を開けておきますね」 「ありがとう。はい、お金」 琴葉がレジを打つ前に、女性はキャッシュトレイに百円玉を四枚置いて、紙袋を抱えて帰っていった。 その後ろ姿を追うように、「ありがとうございました」と琴葉が挨拶をする。 そんなご近所さんから愛されているパン屋。 今日もいつも通りの一日が始まるのだ。
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