お父さん、預かります。

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「はぁ、まだ買い物するのかぁ?もう、ホテル戻ろう」 歩いていると、お父さんがため息ともにそう口にした。 「別にいいじゃない、私、久しく買い物なんてしてないんだから。帰るなら、お父さん一人で帰れば?」 呆れたようにお母さんが声を出す。 「お母さんこそ、いつもワガママばっかりじゃないか」 「なによ!そっちこそ、」 あぁ、また始まっちゃったよ。 最近仕事で、忙しい両親はケンカばかりするようになった。 昔はもっと、仲が良かったのに…。 最近じゃ、二人とも手が触れることさえ嫌がる。 「本当、ムカつく!」 「俺だってなぁ!」 二人の大声に周りが視線を向けてくる。 「二人とももう少し…」 「さっきだって、一人でブツブツ小言ばっかり!」 「お前の買い物が長いんだよ!いっつも…」 私の声など全く届いていないようで、むしろドンドン声が大きくなっていく。 「ちょっと、落ち着い」 「お母さん、良かったらお父さんをお預かりしましょうか?」 私を割って、近くの店からおじいさんが出てくる。 「…え?」 目を見開いて驚くお母さんにおじいさんがニコニコと近くの看板に視線を向ける。 『お父さん預かります。』 「…良いじゃん。預ってもらえば?二人とももう少し落ち着いてから話しなよ。私、あそこのカフェにいるから」 時間が経てば、せめてケンカが収まるかもしれない。 私はそう言って、その場を離れた。
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