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「葵生が欲しいものはないのか、チキュウゴマとか、」 「ないよ。地球ゴマもいらない」 「そうか。でも、お前が欲しがるものは、いつでも、何だって与えてやろう。世界まるごとだってな」  僕は肩をすくめてみせる。会話が途切れた。何だか妙な沈黙ののちに、父さんは云った。「今日は、チチノヒだな」  ああ、そうかと、僕は内心で溜息をつく。せっかく忘れたふりをしていたのに。去年までは渡していたプレゼントを、今年は用意していない。 「そうだったね」僕は努めて沈着に返す。  父さんはそわそわと両手を揉む。期待をしているのが、如実に伝わってくる。このまましらを切りとおそうかとも思ったけれど、「葵生は嘘をつかない人間になってね」と、産まれた直後から母に懇願された僕は、結局、正直に答えてしまう。
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