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「父さんのことを、心の底から自分の父親だって、思えなくなったから」
紫色の眼光が、氷のように鋭くなる。僕は空唾を飲み込み、云い訳のように、つけ加えた。
「だって、僕は父さんと直接会ったことも、一緒に出かけたことも、食事をしたことさえないんだよ。それで本当に家族だって、親子だって、云えるのかな。そもそも僕と父さんとは、何の繋がりもないじゃないか。僕と父さんは、ごっこ遊びの親子だよ」
途端に鏡が割れて、飛び散った破片が僕の頬を切った。母さんが物音を聞きつけて別の部屋から駆けつけてくる。僕は呆然として、フレームだけとなった鏡を見つめていた。
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