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夕焼けの思い出
俺の父親は小さな町工場でネジを作っていた。
毎日夜遅くまで働き帰ってくる父親。
作業着には油が染み込んでいて帰ってくるといつも俺を抱き寄せた。
「とうさんくさいよー。」
「ははは、悪い悪い。一緒に風呂入るか?」
「うん!!」
小さい頃に嗅いだこの油の匂いは臭くもあったが俺の好きな匂いだった。
ある日父親が早く帰ってくると知り母親と2人で家の前の路地でキャッチボールをして待つことに。
「おーい!」
「とーさーん!!」
夕焼けを背に帰ってくる父親の姿を見ると俺はキャッチボールをやめてすぐに駆けつける。
「おかえりー。」
「ただいま。」
父親は俺を抱っこして家への道を歩く。
「あなたおかえりなさい。」
「ただいま。」
「ねえキャッチボールしよー?」
「こら!お父さん疲れてるからまた今度にしなさい!!」
「いいってことよ!じゃあやるか!」
「わーい!」
「もぅ。」
母親の呆れ顔は今でも覚えている。
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