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一度は人類の科学が支配した天空に、もう人間には手を出すことのできない、巨大な蛇が舞っている。
鋼鉄の蛇は、漆黒の体をくねらせて、地球の外側を絶えず巡っていた。
太陽の光を糧に、大気圏ぎりぎりを泳ぐ八百五十二体の「蛇」。体長は、二百メートルほどのものから、最大では七千メートルになるものもいる。
あの蛇たちを造ったのは確かに人類だというのに、蛇を生み出すための材質と技術は、ずいぶん前に人類の知識から失われてしまった。
レヴィヤタンという名前が、蛇にはついている。彼らはその口から、膨大な光と熱を地表に撃ち放つ、「水の焔」を吐き出すことができる。
このほかにも、忌むべき兵器はかつてあった。衛星兵器トールハンマー。光学兵器グングニル。土壌破壊兵器、黄土太歳。その他無数に。
しかしそのすべては、今は地上にない。
寄宿学校の寮で、ルーサー・ハミルトンは、そこまで読んだテキストを投げ出してベッドに寝転がった。
十九時。秋の空は、とうに暮れている。ランプのオイルが心細くなってきていた。
「ルーサー、いるか?」
ドアをノックして、十七歳のルーサーのただ一人の同級生、アールマシーが入ってきた。長身で赤毛、小さな丸眼鏡を小鼻の上にずらしている。
「……入っていいとは言っていないけど」
「確かに。ところで、今日は『流星群』が降るぞ」
「……見たくないなあ」
「望遠鏡で、リサとディッシニがレヴィヤタンの動きを確認したんだよ。間違いない」
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