時の図書館 ―雨があがった後に―

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「ほら館長さん、さっさと時間止めてくれない?」 まるで容易い用事を頼んでくるような軽さで、彼女は私を見上げてきました。 この図書館、そして私の秘密は特別隠しているわけでもありませんし、ご存じの方は大勢いらっしゃいます。 ですので、このように頼まれごとをする事も多くございます。 そういった際は、その方のお話をよく伺って、お受けするか否かを決めさせていただきます。 今回は、あの少女の忘れ物を届けたいということですので、私がお断りする理由は何もございません。 ただ、私が ”時の図書館” の館長の権限を発動する場合、注意点がいくつかございます。 彼女はもうそれを承知してるはずですが、念には念をということで、その注意点を申し上げました。 「でしたら、何か書籍を借りていただかないと」 「わかってるわよ。……じゃあ、この本。ほら、貸出手続きしてくれない?」 彼女はササッと書架から一冊を持ってこられました。 それは、世界中の夕焼けを集めたフォトブックでした。 「なかなか素敵なセンスをお持ちですね」 私は他意なく、正直な感想を申しました。 すると彼女は、とても嬉しそうに「それはどうもありがと」と笑ったのです。 貸出カードに必要事項を記入する私も、なんだか笑顔になっていました。 「では、こちらの貸出期間は……」 「三十分もあればじゅうぶんよ」 私のセリフを遮った彼女は、得意げに言い切りました。 「私、足には自信があるの。それに、館長のおかげで今は二十代の体なんだし……ちなみに、何度も訊くようだけどあの時借りた本の貸出期間は ”永久” なのよね?」 確認するように尋ねてきた彼女は、ほんの少々、瞳に不安を差しました。 ですから私は、彼女に安心していただけるよう、 「もちろんでございます」とお答えしたのでした。
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