匂ひ

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*** 「失礼しまーす、 って、あれ、レイコ先生、どっかいくの??」 レイコ先生って。 保健室に入るなり、天が保健室の女の先生を下の名前で呼んでるのを聞いて、ギョッとした。 え、なに、キモ、普通先生のこと下の名前で呼ぶ?? レイコ先生と呼ばれた保健室の先生は、三十代前半くらいにみえる女性で、若干メイク濃いめ。 先生はちょうど扉の目の前に立っていて、扉に手をかけようとしているところだった。 「あら~♡てんちゃんっ! そうなの、今から職員室に行かないと行けなくて~! ん?お隣さんは?」 先生は私の方をチラリ。 私が口を開く前に天がケロッと「彼女」と言い切った。 ちょっ、 「違うでしょ!!彼女じゃない!!!」 慌てて否定すると、天がムーーッと唇を尖らせる。 「ちぇっ、すぐ否定された~~~~、」 だって彼女じゃないんだもの当然でしょ、何考えてんのよ。 一方の先生は両方のほっぺに手を当てて、目をまん丸くさせた。 「も~~~~~!! びっくりした、本当に彼女さんかと思ったじゃんかぁっ!! やめてよ~、てんちゃんは先生のお気に入りなんだから♡ 彼女出来たら悲しい~~~~~~(笑)」 きも。 何高校生相手にぶりっ子してんの? 思わず、先生を白い目で見てしまった。 てか、天は気持ち悪くないわけ?こんなあからさまに『女』を見せつけられて。 横目で天を見ると、天は平然と笑っていた。 「じゃあ彼女できたらレイコ先生に1番に報告しよっかなー?」 「ええ!?もうやだ、てんちゃん~~っ!」 「あ、先生、保健室使っていい?この子、おでこに怪我してんの。」 ようやく、本題に入る。 先生は私のおでこはチラッと見ただけで、すぐまた天の方を見た。 「も~~~~、しょうがないな! 本当は先生がいない時に勝手に使うのダメなんだけどてんちゃんだから、いーよ♡」 「やった!ありがと、せんせっ。」 天の、天真爛漫なキラキラスマイル。 こいつ、分かってやってる。絶対。 「じゃあ、先生行くけど、困ったことがあったら言ってね?? てんちゃんあちこち荒らしちゃだめよ~?(笑)」 先生は最後まで天だけを見つめて、保健室を出ていった。 ようやく、静かになった保健室。 私は保健室の椅子に座りながら、天に軽蔑の眼差しを送る。 「天、いろーーんな女の先生のお気に入りになってんのね。」 「んー? ははっ。」 自覚あんのかよ。 天は保健室の扉を閉めると、勝手にガサゴソ薬箱を漁り始めた。 「テニス部でケガしたときにちょっと見てもらって、それからあんな感じかなー。 レイコって呼んでって頼まれてさ、 あれ、消毒液どこ??」 「・・・気持ち悪くないわけ? あんな、あからさまに女を見せつけられて。」 私がこう言ったタイミングで、ちょうど薬箱から消毒液が見つかった。
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