絶望的鉢合せ

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*** 「そう、か・・・・」 放課後。 私は教材室にいた。 スペアキーで鍵をあけて、笹尾が来るまで中で英語の予習をして。 笹尾が来てから今日あったことを話したの。 「俺の見てないとこで何やってんだよ、んっとに・・・・!!!!」 こう言って頭を抱えて、グシャリと髪を握る笹尾。 高校の先生は、小学校の先生と違ってずっとクラスにいるわけじゃない。 小学校の先生なら、つぶさに教室で何が起こっているのか把握できるだろうけど、高校の先生はそういうわけにいかない。 クラスにいる時間なんて朝と帰る時のHRの時と、授業があれば、その時間くらい。 そして、ミキちゃんたちのうまいところは、笹尾の目に触れるところでは、福田さんに手を出さないということだった。 だから、笹尾は福田さんが虐められてるところを直接見たことがない。 その上・・・・ 「福田さん、まだ笹尾のこと無視してるの?」 私が訊ねると、笹尾は黙ったまま、コクリと頷いた。 「俺が声掛けても、『僕が先生に言うことは何もありません』って逃げやがるんだよ、クソッ・・・・!!」 そう。 福田さんが笹尾を嫌ってるの。 理由は明白。 笹尾が、福田さんの上履きがなくなった時、みんなの前で謝って、みんなのことを犯人と決めつけてるわけじゃないとかあれこれ言ったから。 これで、福田さんの笹尾への信頼度が地に落ちた。 「・・・・っ。」 目の前で、黙ったまま唇を噛んでいる笹尾。 私は、この男にかける言葉がない。 なぜなら、私も傍観者だから。私も、イジメに加担してる立場だから。 偉そうに、言えることなんてなにもない。 押し黙っていると、笹尾がゆっくりと顔をあげた。 「・・・ありがとな、クラスで何が起きてんのか知らせてくれて。」 っ・・・・・、なんで、お礼なんて言うの。
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