絶望的鉢合せ

8/31
前へ
/536ページ
次へ
「っ・・・・、べつに、あったことをそのまま伝えてるだけよ。 ・・・・福田さんが虐められてるのを、見てるだけ、だから。 ・・・・私は。」 この、胸のモヤモヤ。 この、気まずさ。 この、罪悪感。 笹尾の目が見れない。 口ごもる私を見て、笹尾はキィッと椅子に持たれた。 「・・・・いーよ。 高校生のこーゆー時の思考回路はわかってるつもりだから。 ・・・べつに、お前になんとかしろなんて思わない。俺がなんとかしないといけないことだ。」 ここまで言って、コーヒーを飲む笹尾。その隣には、タバコの空き箱がぐしゃっと握り潰して放置してあった。 コーヒーに、タバコに、笹尾の体がどんどん侵食されていく。 ねぇ、・・・・私は、何がしたいの。 こんなにもモヤモヤして、笹尾に申し訳なさすら感じている。 「・・・・、私に出来ることある?」 ポツリと、訊ねた。 出来ることがあっても、それをするかなんて分からないのに。 こんなこと訊くなんてなんて無責任な。 笹尾は、少し目を丸くすると、ククッと嫌味な笑い方をした。 「は? お前は俺のお手並み拝見、なんだろ?」 ・・・・・・っ、 そう、確かにそう言った、けど・・・・ 「・・・・・・、」 なにも言い返せない私を、笹尾は苦笑いして見てて。 でも次の瞬間、少し切なそうな表情を浮かべて、私の体を抱き寄せた。 「先生、」 笹尾が私の首元に顔を埋める。まるで、私にしがみつくみたいなそんな抱擁。 「・・・・毎日、ここに来て。 頼むから、来て。 ・・・キツい。 今、すげぇキツい。 いてくれるだけでいい、お前がいないと、無理っ・・・・・・」 弱々しい、声。 いてくれるだけで、いい、と。 私は、首を小さく横に振った。 「・・・・いい。 不安も、苛立ちも私にぶつけてよ。 ・・・そばにいるだけじゃなくて、笹尾の気持ちが楽になるなら、 ・・・私に、何をしてもいい。」 笹尾の、全てをこの身に受け止めたい。
/536ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2390人が本棚に入れています
本棚に追加