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「早く床綺麗にしろよ、ほらほら雑巾ここにあるよー!!!(笑)(笑)」
ミキちゃんたちが、掃除道具入れに突っ込んであった生乾きの汚い雑巾を福田さんの机に置いて、福田さんが悲鳴をあげた。
「やめろ!!!汚っ、」
「あ??何??(笑)雑巾持ってきてくれてありがとう??大丈夫、知ってる~!」
「ミキちゃんえっぐ(笑)」
千奈が、コソコソと私に言った。
「あたしが福田だったら学校来れない(笑)
ほんと、自分じゃなくて良かったって感じだよね~!」
千奈の言うことは、確かにそうで。
自分じゃなくて良かった、そう思うことは、いけないことなのか。
醜いことなのか。
人間として、安堵してしまうのは当然の心理じゃないのか。
それを、傍観者だと言って責めるのは、無責任じゃないのか。
・・・・・でも、
罪悪感は、今も胸の中で燻っていて。
ただ、見てるだけ。
笹尾は、どうにかしたいと思ってるのに。
***
昼休み。
私が1人で移動教室の時の忘れ物を取りに行っていると、外の手洗い場で、バッグを一生懸命洗っている福田さんを見つけた。
ジュース、ぶっかけられてたもんね。ベタベタになってるに決まってる。
福田さんはねっとりとした黒髪を肩から払いつつ、バッグを水に晒して何度も絞っていた。
「・・・・・・。」
私だって、この女が嫌いよ。
だって気持ち悪いもん。まじでキモい。生理的に無理。受け付けない。
だけど、
可哀想とは、思ってる。
ここは、私たちの教室がある棟とは真反対の棟。人通りは少ない。
ここなら、声をかけても大丈夫、か。
「ねぇ。」
私は、一定の距離を保ったまま、福田さんに声をかけた。
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