絶望的鉢合せ

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「ちょっ、」 何勝手に決めてんの・・・!? 私が口を開きかけると、それよりも早く天が私の目の前に飛び込んできて、そして、にっっこり。 「帰ろっ、詩。 てか、話したいことあるし。」 話したいこと・・・? テニス部の男の子たちは、 「天、告白か~~~??」 「天ちゃん俺のこと捨てるの!!?(笑)(笑)」 なんて笑ってて、天もそれに対してケラケラ笑う。 「うっせ、ばーか、散れ散れっ!」 いや、天も散ってよ、何、この目立つ誘い方。 テニス部男子が笑いながら立ち去った後、天は人懐っこい笑みを浮かべて、私の方を見下ろした。 「じゃ、詩、帰ろっか。」 ・・・一緒に帰るなんて、私言ってないのに。 こう言いたいのをグッと飲み込んで、渋々、天のあとを着いて行く。 まだ、日は落ちてない。 今日の夕陽は、妙に、赤い。 「やー、福田さんやばいね。」 天が、前を見て軽く言った。 プラタナスの並木道を抜けると、さらに夕陽が赤々と差し込む。 天の顔が、夕陽に照らされる。 「・・・そーね。」 「ジュースぶっかけるとかよくやるよな。女、怖ぇー。」 「・・・・・・。」 淡々としていて、怖いと言いながらも、どちらかというと、天はどうでもよさそうな感じだった。 天の言いたい話は、きっとこれじゃない。 「・・・そうね。よくやるよね。」 警戒しながら天に相槌を打つ。 天は、「なー。」とまた軽く返事した。 「ほんと怖いよなー。 そーゆーことされてる福田さんに迂闊に声掛けたら、やばいんじゃない?」 っ、 ちら、と天の方を見上げる。そのタイミングで天が立ち止まった。 「天、」 「今日、テニス部の友だちに、詩が手洗い場で福田さんに話しかけてるの見たって言われたんだけど。 どゆこと? 関わらないでって俺言ったじゃん。」
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