絶望的鉢合せ

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*** 「ん、ぅ、」 身体中が、痛い。 目が覚めた時、まだ日は登り切っていなかった。 薄暗い部屋の中で体を動かそうとすると、ツンと、精液の独特の臭いが鼻をかすめて。 ああ、昨日のこと思い出しちゃう・・・ それに、体温。 笹尾が後ろから私を抱きしめて眠ってるの。 ・・・ぎゅっ、と。 「・・・せんせ?」 そっと笹尾の腕に触れて声をかければ、笹尾が私の体に顔を埋めた。 「っ、う、た・・・・・」 なんて、いじらしい。 まだ覚醒しきってない頭で、私の名前を呼ぶなんて。 「そうよ、詩よ。せんせ、起きた?」 もう一度声をかけると、笹尾が吐息を漏らしながら私の体を抱きしめ直した。 「っ、・・・・・起きた。 っ、夢、見た。」 ・・・・・夢? 「どんな?」 笹尾の手の甲をゆっくり指でなぞりながら、仄かに、期待する。 なんか、まだ、欲しいの。 笹尾はするするとその手を私の胸の上に滑らせて、そして、私の期待通り胸をゆっくりと揉みしだいた。 柔らかな胸に、笹尾の指が吸い付くように触れて、それだけで私の体の奥に、じっとりとした熱がこもる。 「・・・・笹尾、」 「小学6年ん時、肺炎ですげー高熱出して、入院した時の夢見てた。 意識朦朧としてんだけど、なんか、親の声とかが断片的に聞こえてて。」 こう言いながら、私の首筋をちうちうと吸う笹尾。 小学校6年生って、笹尾がお兄ちゃんに虐められてる頃、か。 「入院、したんだ?」 「・・・ああ。 おふくろや親父がすげー心配してて、でも俺はそんとき、死んでもいいって思ってたんだ。 白上に虐められて、苦しかったから。」 首筋に、立てられた歯。 笹尾は私の耳元で囁いた。 「その妹と今こんなことしてんだから、先のことなんてわかんねぇよな?」
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