絶望的鉢合せ

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「こんなことしてるなんて、絶対学校のみんなに言えないね。」 玄関で靴を履きながら私は飄々と言ってみせる。笹尾も靴を履きながら頭を掻いた。 「当たり前だろ、俺のクビが飛ぶ。」 「飛ばしてあげようか?」 「やめろカス。」 笹尾がドアノブに手をかけた。 そして、呆れたように一笑する。 「っと、怖い女。」 ゆっくりと、開かれた扉。 私と笹尾が出ようとした、その時だった。 「優一、これ、どういうこと?」 扉の前には、腕を組んで立っている女性がいた。 その顔、私は何度も見たことがあって。 笹尾の表情が凍った。 「おまっ、」 「何その顔。 あなたの可愛い彼女が会いに来てやったのよ。」 そう。 この女性は笹尾の彼女。 髪を綺麗に巻いて、爪をキラキラとネイルして、ヴィトンのバッグを持って、ジッと、笹尾を睨んでる。 やば、い。 人に見られた、嘘、どうしよ、 やばい、 えっ、えっ、 「何が彼女だよ、別れるってちゃんと言っただろっ、」 笹尾がこう言うと、彼女はフンッと鼻で笑う。 「はぁ?私は納得してませんけど? へぇ、アンタが優一をたぶらかしてんの? 制服着てるけど、何、優一の生徒?? アンタ、人の彼氏に手を出してどーゆーつもり?」 彼女さんは私を睨みつけて、はっきり言った。 頭が、真っ白になった。
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