匂ひ

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今、目の前にいる女は、何度も見たことがある。 高校に入学する前、笹尾のインスタに張り付いてた頃、この女と笹尾が2人で写ってる写真が何枚もアップされてるのを見た。 名前だって知ってる。 名前は『清香(きよか)』。 清香さんは、私を敵と見なして、憎しみを剥き出しにしていた。 「あ、の、」 あまりにも突然のことに脳内の処理が追いつかない。 声が、上手くでない。 どうしようって、そればっかりが頭の中で駆け巡ってる。 固まっている私の前に笹尾が庇うように立った。 「俺、ちゃんと別れようって言ったじゃん! 今更何出てきてんの? 清香だって納得してただろ!?」 「あの時は頭が混乱してて別れるって言っただけ! でも、やっぱりちゃんと考えてみたら、私、優一と結婚したいの!優一以外考えられない!! 私は別れるなんて納得してないから!!だから私はまだ彼女だもん! 優一のこと、好きだもんっっ!!!!優一以上の男なんていないもん!!!」 「はぁ!!?? ちょ、声デカいって!!入って!!!」 笹尾は清香さんを無理やり玄関に引きずり込んで、そして、ガチャンッ!と扉を勢いよく閉めた。 「お前何言ってんの!?」 で、本当に信じられないって顔で、清香さんに言葉を投げつける。 清香さんは私の目の前であるにも関わらず、ボロボロ泣き始めた。 「優一こそどうしてそんな酷いこというの!? 私だって寂しかったんだよ!? 優一、いつも仕事仕事って言って、全然会ってくれなくて、それがどれだけ私を不安にさせたか分かる!? それなのに、一方的に別れようって言ってきて・・・!!」 「清香が俺の仕事をバカにし続けるからだろ!? 何一方的に被害者ぶってんだよ!!!!」 「バカになんかしてない! ただ、優一が頑張ってるからそんなに頑張らなくていいんだよって言おうと思って・・・!! だってどうせいくら優一が頑張ったって、生徒は話聞いてないし、無駄じゃん!! 私は!そんな生徒より、優一を支えてる私を大事にして欲しかったの、」 ここまで言うと、清香さんは顔を上げてギロッとこちらを見た。 「それなのに、こんな糞ガキには会う時間があるんだ??」 ・・・・・・・!!! まずい、と思った時には清香さんに腕を掴まれて、清香さんの前に引きずり出された。 「痛っ、」 「清香!!!!」 「何この女、高校生じゃん、高校生の癖に人の彼氏取るとかどういうこと? お前、どういう神経してんの? てか、優一の将来潰す気?? お前のせいで優一がクビになったらどうすんのよ!!!!!」 「きゃあ!!!!!!」 思いっきり突き飛ばされて、玄関の廊下に体を打ち付けた。 しかも、清香さんは私の上に馬乗りになって私をタコ殴りにする。 「きゃあ、じゃないでしょ!!!淫乱女!!!! あんたが優一を誘ったんでしょ!!?変態!!! 学校行けなくしてやろうか!!????」 「清香やめろ!!!」 笹尾が、清香さんを後ろから羽交い締めにした。
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