匂ひ

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「清香、落ち着けって!」 笹尾に抑えられても、清香さんが落ち着くことはなくて、清香さんは髪を振り乱して私の胸ぐらを掴んできた。 「ガキのくせにっ、大人に色目使ってんじゃないわよ!!!! お前のせいで優一が職を失ったらどうするの!?お前のせいで一生を棒に振るのよ!!!!! いい!?優一はね!!お前なんか本気にしてないんだから!!!! お前は遊びよ、遊び!!! 優一は私と結婚するって約束したのっ!!!!」 「清香!!!」 笹尾が、清香さんを私から引き剥がした。そして、清香さんを睨みつける。 「誰が結婚するって言ったよ、誰もそんな約束なんかしてねぇよ、」 「だって優一、」 「俺は!!!」 笹尾が、吠える。 拳を震わせて、目を、真っ赤にして。 「俺はっ、俺の仕事をなにかと見下して馬鹿する清香が嫌だったんだよ!! 1回別れるって納得したくせに、今更彼女ヅラすんじゃねえ!!!! 俺と清香は、もう他人なんだって!!」 笹尾が言い切った後、清香さんはしばらく何も言わなかった。 ただ、唇を噛んで黙って泣いて、震えていた。 笹尾が彼女と別れたのは、仕事のことをバカにされたのと、 あと、私を陵辱した時点で彼氏でいる資格がないと思ったから、って前言ってた。 もし、私が笹尾に復讐しようって思わなければ、笹尾は清香さんとずっと付き合ってたのかな。 これって、私のせいなの? いやでも、笹尾はどの彼女とも長続きしないって言ってたし、それに仕事のことバカにされて喧嘩もしてたし、 でも、 「優一は、騙されてる。」 ・・・・・え? 恐ろしく低い声が、重苦しい空気にピンッと糸を張った。 騙されてる、って・・・ 怖々と清香さんの方を見ると、清香さんは真っ赤に充血した目をギラギラとこちらに向けていた。 なっ、 「清香っ、」 「あんたのせいで、優一がこんな血迷ったこと言うようになったのよ! 全部あんたのせいよ!!!優一を返して!!!返してよおぉお!!!!」 ガツンッ!!と、おでこに衝撃が走った。 そのすぐ後に、カランカラン、とピンヒールが転がる音が。 え、 靴投げられた・・・・? 慌てておでこに手をやると、ヌルリと、生温かい液体が付いたのが分かって。 これ、血っ・・・・・・ 「清香!!!!!!」 傘立ての傘を投げようとする清香さんを、無理やり抑え込む笹尾。 それでも清香さんは私を罵倒することをやめなかった。 「あんた、絶対に許さないから!!!!! 絶対に絶対に、許さないからぁっ!!! この援交女っ、このままで済むと思うなよ!!!!!!」
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